このたび、仙台市が創設した「仙台『四方よし』企業大賞」の平成29年度の大賞を受賞することができ、大変嬉しく思っています。私は、会社は地域を良くするためにある、と思っています。個人の力で地域に貢献していくには限界がありますが、それを組織として取り組むのがサイコーだ、と自社の経営を捉えています。

当然、事業を通して利益を出すことは必要ですが、儲けるために事業をしていくのではありません。事業を通して地域に貢献していくことと、利益を出していくことを、同じ温度で回していくのが事業だと思うのです。また、経営という観点では、「事業拡大」という点だけで社員をまとめていくのは難しいと思っています。社員に「売上を上げろ」と言っても、売上が上がることはありませんから。そのために、社員が仕事を通して、地域への貢献感を実感し、自ら成長していける仕組みを回していく、当社が経営理念や経営方針で謳っているのはそういうことです。

当社は、ゴミ収集所が汚れていれば当たり前に掃除をします。地域住民の方から「ありがたかったので、どうしても連絡したくて」と電話をいただくことがあります。また、収集の際に小学生が通りかかれば手を振る社員もいます。近隣に住むお子さんが引越しする際に、ゴミ収集をする社員に「サイコーさんへ」とお手紙をくれたこともあります。

おそらくこれは氷山の一角で、社員の日常のおびただしい数の努力により、地域の人が感動してメッセージをくださり、それによって社員が感動する。そして、感動して心が動けば、当然仕事に対するやりがいは変わりますよね。給与のためではない仕事ができるようになり、成長し、その社員により、自社が理想とする事業が回っていく、という循環が生まれる。今回の受賞は、こういった一つ一つの仕事や、その実践のための努力が一定の評価を得たものと思い、私自身嬉しく思っています。

当社は、1973年、私の父がトラック一台で「ちり紙交換」を始めた所からスタートしています。その後、古紙回収・ビンカン回収、スーパーなどの廃棄物処理、現在では機密処理事業と展開。2013年には、仙台市の委託を受けて家庭ゴミの回収を始めていますが、その少し前に100名程度だった社員数は、現在200名を超えるまでになりました。

また、グループ会社に、多店舗展開のチェーンストア向けの廃棄物管理コンサルティングを行うSKトレーディングがあります。以前は、離職率も低くはなかったですし、なかなか理想とするような方々を採用することもできませんでした。そのため、私自身は、経営者になる前から「どうすれば人が採れるか」「定着してもらえるか」「成長してもらえるか」に関して、特に時間と労力を割いて来たつもりです。

現在伸びている事業に、「エコ活事業部」のリサイクルポイントシステム事業があります。これは、一般家庭から出た紙やダンボール・ペットボトルなどを、スーパーに設置した当社のボックスに持ち込んでいただくと、ユーザーさんにリサイクルポイントが溜まり、割引券が発行される、というものです。

Ｅコマースの発達によって段ボールゴミが増えた一般家庭にとってはよい回収場所になり、設置場所になるスーパーさんにとっては集客に繋がる、ということで非常に好評で、導入店舗数が広がっています。これは、お客さまの役に立つと同時に、従来子供会などが担っていた廃品回収が困難になっていく世の中で、家庭ゴミの「ゴミ化」を防ぐ、という意味で社会貢献に繋がる活動だと考えています。

また、このリサイクルポイントには、サイコーから1円、店舗さんから1円を拠出し、被災学生を支援するNPO団体などに寄付する、というような仕組みを導入しています。つまり、ゴミを出す一般家庭の方々が、「いらないものが社会の役に立つ」という気持ちになれるような仕組みになっているのです。

一般の家庭が、赤十字などに寄付をする、というのはハードルが高いことかもしれませんが、ちょっとゴミをお店にまで運べばポイントがついて、身近でリアルに役に立つ、ということが実感できる。これは地域の一般家庭が、お店が、そして自社がリアルに地域貢献できる仕組みです。こういった形で「まちづくり」に貢献できる、事業を通じて地域を良くする取り組みになっていると思います。

社員が仕事を通した感動によって成長できるよう、正しい行動を促す仕組みは徹底しています。出社から退社まで、車のカーブの仕方に至るまで、細かく自分たちで定めたマニュアルがあります。2011年に初版を作り上げたこのマニュアルは、2年間かけて作成しました。

これは社員の規範になると同時に、褒めるための明確な基準にもなっています。「ジリキ向上プロジェクト」という、長期にわたる社員教育プロジェクトも実施していますが、これは成長のPDCAが回るような仕組みです。

また、社員にはお金だけではない豊かさを感じられるようになってほしいという思いから、家族そろっての野菜作りや、職場見学などのイベントも数多く実施しています。「パパの会社に入りたい」と言ってくれるお子さんもいて、社員の励みにもなっているようです。

プライベートが充実することも、社員の心が動く大事な要素です。先にお話したように、「売上を上げろ」の言葉に人の心は動きません。仕事や仕事に関わる出来事一つひとつを通して社員と心を通わせ、「金銭だけではない豊かさ」を感じてもらうことで社員は主体的に成長していくもの、と私は考えています。

今後は、仙台の環境行政に貢献する事業活動により、市民サービスを向上させる会社にしていきます。社会を良くする事業に取り組むことで、この組織にいる意味を感じ、社員がまとまっていく。また、社員から経営者を出したい、とも思っています。

すべては「会社を強くするために」何をするかという視点です。「しあわせ　ゆとり　豊かさ」は経営理念の一節ですが、これは社内だけでなく、地元仙台への地元貢献をしながら、社員とともに全国に拡げていきたいと思っています。