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年商300億円を目標にエンターテインメントリユースを推進。そして海外展開へ。

株式会社万代
代表取締役 倉橋 純一

更新日:2023年10月11日

1972年生まれ。近畿大学を卒業後に起業を志し、2001年に有限会社万代を設立。2003年、現在の本社を置く仙台で、仙台1号店をスタートさせる。順調に業績を伸ばすも、東日本大震災により大きなダメージを受け、急減速。オンラインフリマアプリの登場などリユース環境の競争が激化したことを受け、顧客ターゲットを従来の男性層からファミリー層向けにシフト。「アミューズメント×リユース」店舗へと業態転換を行い、コロナ禍で来店者数が減少するものの、非対面のクレーンゲームなどが好評を博して業績を大きく伸ばす。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

父の志を受け継ぎ、25歳で起業。

当社はリユースとアミューズメントの融合したエンターテインメントリユースショップ「万代」を、北海道・東北地区を中心に15店舗展開しています。

ゲーム、トレーディングカード、コミックといったメディア商材の買い取り販売は、従来から行なっていました。そこに、より多くの人を集めるためのアミューズメントをドッキングさせたのです。クレーンゲームなどは非対面で遊べるため、コロナ禍でも人気がありました。加えて、アニメの大ヒット作品の登場もあり、業績は大きく伸びています。

私が万代を起業したのは2001年。父はもともと、西日本に約150店舗広がるビデオレンタルチェーンを経営していました。私は経営者として人の何倍も努力する父を尊敬していましたが、私が大学生の頃に事業が上手くいかなくなりました。大手フランチャイズ店の急速な拡大により、競争が激化したのです。

「父のような人でも、うまくいかなくなるのだ…」と痛感しました。ならば私がビジネスの世界に身を投じ、成功することで父の志を果たそうと考えたのです。

中古品のリセールビジネスに着目したのは、比較的低資金で行なえたからです。ゲームでもDVDでも、新品の半額程度で商材を用意できます。そこにメーカーからの委託販売、すなわち「商品が売れたら仕入代を払う」という形でDVDなどを加え、ターゲットを男性に絞り込んだショップをスタートさせました。

仙台、札幌へ。ナイトマーケット需要をつかむ。

第1号店は滋賀に立ち上げましたが、滋賀は知人に任せ、私は29歳の時に仙台へ進出しました。滋賀県で店舗展開をしようと思ったら、今後出ていくエリアは京都か大阪に限られます。当時ナイトマーケットに魅力を感じていましたが、京都・大阪には夜遊ぶところがいくらでもありました。

そこで、夜に若者が24時間営業のファミレスに多く集まる地域を調べました。夜ファミレスが繁盛するということは、若者たちが行くところがなく、娯楽に飢えているということです。娯楽に飢えていて、人口のパイが多い地域として該当したのが仙台・金沢・松山の3か所です。

そして、たまたま仙台でよい物件が見つかったことで、仙台市に出店することがきまりました。今も本社を構える太白区中田町に、仙台の1号店となる仙台南店をオープンさせたのは2003年のことでした。

滋賀の店舗では朝10時開店、深夜2時に閉店という営業形態。夜の買い物は日中に比べ、単価が上がる傾向にあり、22時以降は売上がぐんと伸びました。仙台のマーケットでは24時間営業することにしました。売場面積は1,200坪でしたが、リユース売場は600坪くらい。

空いた残りの600坪に約300台のゲームを置き、15分100円で遊び放題というアミューズメントスペースに仕立てました。そういった業態は仙台で初めてだったこともあってか、大盛況。成功を受けて泉、多賀城、県北にも進出しました。

札幌への進出は2006年。仙台の2倍のマーケットになる札幌で挑戦してみようと考えたのです。札幌では仙台の店舗を軸にアイテム数を増やしていきました。ゲームやコミック、DVDに加え、古着やフィギュアなど、ターゲットである男性の喜びそうな物を集めたのです。

イメージで言うと、ニッチな深夜番組ですね。ゴールデンタイムで大衆に受けるのではなく、コアなファンを楽しませる、という感じ。この業態は札幌でも受け入れられ、売上を伸ばしました。

店舗をファミリー層向けにリニューアル。

順調だった歩みを直撃したのが、2011年の東日本大震災です。仙台エリアの店舗も、震災で多大な被害を受けました。3店は約2ヶ月後に再開できましたが、最も被害の激しかった多賀城店が復活したのは1年半後です。

売上は7割減で、従業員を解雇せざるを得ませんでした。立場の弱い従業員を守れなかったという痛恨の思いは、私の胸に深く刻まれました。これは経営者としてあってはならない、厳に戒めなければならない、と今でも思い返します。

震災と共に転機となったのが、2013年登場のオンラインフリマアプリです。これにより、リユースの市場は格段に大きくなる一方、買取客の数が急減。リアル店舗を持たないフリマアプリが大変な脅威になりました。

2015年に株式会社ハーフプライスという子会社を立ち上げたのは、その対策の一つ。農機具のリユースという、フリマアプリとは競合しにくい分野を拡充しようと考えたのです。しかしそれだけでは、事態に対応できません。そこで、ファミリー層をターゲットとする店舗へのリニューアルを決断しました。

ファミリーは週末にどこで食事をし、どんなレジャーを楽しむのか。どれくらいお金を投じているのか。もともとマーケティングが好きな私は、ファミリー層について徹底的に研究し、そのペルソナやスタイルを意識した店構えに変えていきました。

リユースとアミューズメントの融合。

ファミリー層に向けてサービスを提供しようと走り始めた頃、今度はコロナ禍に見舞われました。対面型サービスが落ち込む中、一つだけ伸びたのが、非対面型のアミューズメントであるUFOキャッチャーです。アニメの大ヒット作品が出て以降、キャラクターグッズを景品に揃えたUFOキャッチャーは大人気でした。

これにより、UFOキャッチャーでゲットしたアイテムやフィギュアをフリマアプリで販売する、という流れが目立ってきました。UFOキャッチャーのアイテムはクレーンゲームの中のみで流通します。完全にリユースでしか購入できない商材なのです。

万代はアミューズメントとリユースを一つの店舗に共存させています。UFOキャッチャーで取ったアイテムをフリマアプリで売るより、その場で店舗の買取コーナーに持ちこんで買ってもらった方が、お客様は遥かに手軽です。これならフリマアプリに勝てる、とにらんだ私はアミューズメントコーナーを拡充しました。

見込みがあたり、売上は3年で3倍に拡大。その頃から当社は、単なるリユースではない、エンターテインメントリユースを標榜するようになったのです。

300億円を達成後、上場、海外進出も視野に。

今は店舗で物が売りにくい時代です。欲しいものはネット通販でたいてい揃ってしまいます。そんな中、店舗にお客様に来ていただくには、欲しい物があるからではなく、来るとワクワクするような、楽しめるようなお店でなければいけないでしょう。

そのため、マーケティングには力を入れています。専用のAIツールを導入し、お客様動向の詳細な調査も始めました。各店長にはそのデータを基に、イベントを企画してSNSでの発信の仕方などを工夫してもらっています。いわゆる科学経営の実践です。

目指すのは、2026年までに売上300億円の達成です。300億円へのプロセスで上場もしたいと考えています。上場によって得た資金を、海外への展開に活用したいのです。日本の他地域に進出するより、海外に出た方がチャンスは大きいと見ています。

海外でどんな業態を展開するか、まだ明確ではありません。サブカルチャーや農機具の輸出を拡充させるのか、日本のデフレ期に成長した企業のビジネスモデルを展開するのか、選択肢はいろいろ。2026年まで会社のスケールを大きくして、その資本力をもって海外展開に大きく舵を切っていきたいと思っています。

様々な能力・経験が活かせる。

まだまだ成長途上にある当社には、多くの人材が必要です。例えば、世の中の進む方向と現実とのギャップを数値化できる人。ビジネスを組み立てるための参謀となる人ですね。買い物をするときの動線を作るマーケティングが好きで、それをずっとやってきました。私の手の届かない部分をうまくサポートしてもらえば、と思います。

他にも店舗開発、広報、海外事業など、様々な分野にスペシャリストが必要だと感じています。営業に強いとか、マネジメントは好きだとか、職種ごとの強みを持つ人でも良いし、人事や研修、クリエイティブ業務の経験がある人にも活躍の場があります。

オールマイティーである必要はありません。人の能力はそれぞれ違うのだから、それぞれが得意な分野で全力を尽くせばいいのです。それらがうまく連携すれば、万代がさらに発展する原動力となるでしょう。この事業が好きで、もっと向上したいという思いがあるなら大歓迎です。一緒にエンターテインメントリユースの価値を高め、海外展開する基盤を築きましょう。

編集後記

コンサルタント
佐藤 理貴

宮城県に住んでいる多くの方が知っている「万代」。震災とフリマアプリの台頭という大きな危機を乗り越え、コロナ禍でアミューズメントとリユースの融合ショップという新業態を生み出して飛躍的な成長を遂げています。

創業から現在まで次々と新しいビジネスを生み出し、ヒットを続けている要因は、倉橋社長が得意とするマーケティングと徹底的な業態研究です。2026年までに売上300億円を達成して上場、そして海外展開へと舵を切っていく同社の輝かしい未来への可能性を感じられたインタビューでした。

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