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誰もやっていないことに挑む。その先に、新しい産業のかたちがある。

日本積層造形株式会社
代表取締役社長 大竹 卓也

更新日:2026年1月07日

総合商社で鉄鋼貿易に従事し、中東・アフリカ・北米など資源国向けのグローバル案件を経験。石油掘削用鋼管の輸出や原油・ガス権益投資、新規事業開発を手掛ける中で金属3Dプリンティング技術と出会い、2017年の設立時から日本積層造形株式会社の経営に参画。工場立ち上げや組織基盤整備を担い、2022年に3代目社長就任。受託造形を軸に宇宙・自動車・産業機械分野への適用を広げ、積層造形の社会実装と製造インフラ化に挑んでいる。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

総合商社から始まった異色の挑戦。

日本積層造形株式会社(以下:JAMPT)の立ち上げに関わる前、私は長らく総合商社で鉄鋼貿易を担当してきました。中東・アフリカ・北米といった資源国を駆け巡り、石油掘削用鋼管を輸出する仕事を通じて、いかに「現場で必要とされるものを確実に届けるか」を学びました。

その後、会社の新規事業発掘に取り組む中で、新しいモノづくりである「金属3Dプリンティング(積層造形)技術」に出会います。

そして2016年頃より総合商社・双日株式会社の新たな挑戦として、金属材料研究の雄である東北大学や、長年にわたり技術力を磨き上げてきた鋳造メーカーの株式会社コイワイとの連携をベースに事業化を検討。2017年の会社設立、2018年の工場立ち上げを経て、2022年に私自身が3代目の社長に就任しました。

JAMPTが担う独自の使命。

JAMPTは、金属3Dプリンタによる受託造形サービスを展開しています。高額な装置を持たない企業に代わり、試作や部品造形を請け負う形で技術の導入を支援しています。

装置は1台あたり2~3億円と非常に高価で、運用にも専門的なノウハウが必要です。そのため、まずは私たちが実物を造ることで、技術の価値を体感いただくことから始めています。

この「受託造形事業」というビジネスモデルは、国内ではまだ確立されたものではありません。

そもそも日本の製造業は、鍛造や鋳造、機械加工といった「削って形をつくる」引き算の文化に根ざしています。

その中で、30~50ミクロンの粉末を一層一層積み上げて一体成形する積層造形は、これまでのモノづくり常識とは大きく異なる製造方法です。

ただ、積層造形ならではの強みも明確です。金型なしで複雑な形状を実現でき、10カ所以上の溶接が必要だった部品を一体で造形することも可能です。

ビジネスモデル確立へ、積み重ねの日々。

現在は年間50~60社の試作品を手がけており、依頼の多くは大手製造業の開発部門からです。金属3Dプリンティング技術の価値を感じてもらう機会は確実に増えてきていますが、それを継続的なビジネスに育てるのは容易ではありません。

試作した部品がそのまま量産につながるケースはまれで、ほぼすべての案件が試作、検証、再設計というサイクルを経て、ようやく量産に向かいます。そこに至るまでには4~5年かかることも珍しくありません。

また、造形のたびに素材や形状、使用環境が異なるため、造形条件の最適化には毎回多くの工数がかかります。成功率を高めるために、事前の検討や試行錯誤が必要で、失敗を恐れず粘り強く取り組む姿勢が求められます。

現在の業務の多くは、一度きりの試作対応です。本当の意味で事業を安定させるには、単発ではなく継続的な依頼を増やしていくことが不可欠です。

理想としては、売上の5~6割をリピート顧客で支え、残りを新規案件で構成する形を目指しています。そのためには、技術だけでなく、お客さまの社内で「これなら本採用できる」と判断していただくまで伴走する力が必要です。

私たちは今、「受託造形だけで事業が成り立つ会社」になるための基盤づくりの最中にあります。安定稼働と収益性を両立させるために、まずは目の前の一件一件に真摯に向き合う。小さな成功体験の積み重ねこそが、将来の大きな信用と信頼につながると信じています。

宇宙・自動車分野で広がる可能性。

積層造形という技術が、試作だけでなく本格的な社会実装に近づいてきた手応えも感じています。

中でも、宇宙関連の領域は実用化が進んでいる分野の一つです。たとえば、JAXAの月面着陸機『SLIM』プロジェクトでは、私たちが造形したアルミ部品が着陸脚に採用されました。

衝撃吸収の役割を果たすため、内部にラティス構造を組み込んだ非常に軽量な設計で、金型では決して実現できない形でした。

最近では、宇宙スタートアップからの引き合いも増えています。ロケットや人工衛星など、限られたスペースや軽量化が求められる領域では、積層造形の設計自由度が武器になります。

設計変更への対応スピードや、繰り返し試作を可能にする柔軟性も高く評価されています。

また、自動車分野でも期待は広がっています。量産部品にはコストの壁がありますが、開発用の試作品やアフターパーツなど、小ロットで高付加価値な部品には積層造形が有効です。

金型をつくらず短期間で納品できることは、開発スピードを重視するメーカーにとって大きなメリットになります。

こうした取り組みはまだ一部に過ぎませんが、社会の中で「使われる」段階へと着実に進んでいます。国の支援も追い風となり、現在は5カ年の大型プロジェクトにも参画中です。

これからは、製品単体だけでなく、造形後の処理や設計支援、ソフトウェア開発なども含めたトータルな価値提供が求められてくると考えています。

求める人材は挑戦心と探求心。

この仕事に正解の型はありません。積層造形の分野自体がまだ発展途上であり、私たちが取り組んでいる「受託造形専業サービス」というモデルも、前例がほとんどないからです。

だからこそ必要なのは、「やったことがないからこそ挑戦してみたい」と思える人。失敗を恐れず、一つひとつ試していける人と一緒に働きたいと思っています。

JAMPTには、若手の高専卒エンジニアから金属加工経験者、CAD・シミュレーションに強い人材まで、バックグラウンドも得意分野も異なるメンバーが集まっています。

共通して大切にしているのは、「なぜこの工程が必要なのか」「どうすればお客さまの課題を解決できるか」と、物事の本質に目を向ける姿勢です。

技術の幅広さゆえに、一人で完結する仕事は少なく、社内外の連携が欠かせません。設計・造形・後加工・品質保証まで、各工程のプロ同士が互いにリスペクトし合い、細やかに連携をとることで、はじめて製品として成立します。

そうしたチームの中で、「自分は何が得意か」「どこで貢献できるか」を自分の言葉で語れる人が、ここでは力を発揮できると思います。

私たちはまだ小さな組織ですが、その分、一人ひとりの裁量や影響力は大きい。そして、全員が「まだ誰もやっていないこと」に日々取り組んでいます。

自ら考え、自ら動く。その積み重ねが、新しい産業のかたちをつくる原動力になると信じています。

積層造形を当たり前の技術に。

私が描いているのは、積層造形という製造方法が「特別な技術」ではなく、「当たり前の選択肢」として定着している未来です。

もちろん、従来の鍛造や鋳造をすべて置き換えるものではありません。ただ、積層造形でなければ実現できない部品や構造が確実に存在します。

その価値を一つひとつ証明しながら、社会に根づかせていくことが、私たちの使命だと考えています。

目の前の造形依頼に真摯に向き合い、技術と信頼を積み重ねていく。その結果として、まずは受託造形だけで年商5~10億円の事業規模に成長させることを目標にしています。

そしてその先には、ソフトウェアや後工程を含めた一気通貫のソリューション提供や、顧客との共同開発といった新しい価値づくりのフェーズが待っているはずです。

宇宙、自動車、産業機械など、分野を問わず積層造形の社会実装が進むことで、日本のものづくりの競争力はさらに高まっていく。

私たちJAMPTは、まだ誰も歩いていないこの道を、自ら考え、自ら動ける仲間たちとともに、一歩ずつ切り拓いていきます。

編集後記

コンサルタント
高岡 幸生

「新しいモノづくりを日本に根付かせるため、お客さまと技術に真剣に向き合う日々です」――取材の終盤、大竹社長は静かにこう語られました。

積層造形というまだ確立されていない製造手法の社会実装という高い目標を掲げ、着実に実績を積み重ねている姿勢に、強い誠実さと芯のある信念を感じました。

技術的な難しさはもちろん、ビジネスとして確立していくハードルも決して低くはない。けれども、JAMPTに集う多様な人材と手を取り合って、その一歩一歩を共に切り拓くという意志が、言葉の端々ににじんでいました。

本社を構えるのは宮城県多賀城市。仙台に近いこの地から、日本の製造業の未来を形づくろうとしている姿勢は、地方発のものづくりが持つ可能性をあらためて教えてくれます。

技術、組織、人。そのすべてにおいて、「これから」を語るにふさわしい現場に立ち会えたことに感謝しています。

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