2023.11.13
台湾PSMCが宮城に半導体工場進出-JAMS・Rapidusとの比較と、経済効果・雇用への期待
こんにちは。リージョナルキャリア宮城のコンサルタント、佐藤理貴です。
先日、日本国内での半導体製造に向けて準備を進めてきたJSMC株式会社は、宮城県に新工場を建設することを発表しました。
このJSMC社とは、SBIホールディングスと台湾の半導体受託製造(ファウンドリ)のPowerchip Semiconductor Manufacturing Corporation(PSMC)が、今年7月に共同設立した半導体工場の設立準備会社です。
新工場の総投資額は8,000億円規模と見込まれており、県内各所で大きな話題となっています。
ここ数年、日本国内では熊本に台湾のTSMC(JASM)が、また北海道にRapidusが工場を建設するなど、半導体製造工場の建設が相次いでおり、日本の半導体産業が活性化してきていると感じています。
今回は、先行しているJASMとRapidusが開示している情報と比較しながら、PSMCの新工場がどのような戦略を描いているのか、宮城県にどのような影響があるかを考察してみました。
日本国内に工場建設を計画しているファウンドリとの比較
先に日本での工場建設が決まったファウンドリのJASM(TSMC)、Rapidusの2社との違いを表にしてみました。
JSMC(PSMC) | JASM(TSMC) | Rapidus | |
---|---|---|---|
所在地 | 宮城県 | 熊本県 | 北海道 |
出資元 | SBIなど日本勢が過半数 | TSMCが大半 | 日本政府 |
主要製品 | ロジック半導体、メモリー | ロジック半導体 | ロジック半導体 |
プロセス技術 |
28nm 40nm 55nm |
12nm/16nm 22nm/28nm |
2nm |
顧客 | 電気自動車 | 車載、イメージセンサー | 米国大手IT企業 AI、量子コンピュータ等 |
投資額 | 8,000億円 | 約1.2兆円(86億ドル) | 5兆円規模 |
業界シェア | 6位(PSMC) | 1位(TSMC) | - |
こうして比較してみると、各社の戦略の違いが分かります。
まずプロセス技術ですが、世界最大のファウンドリTSMCが親会社であるJASMは「12nm~28nm」、日本の大手企業8社が出資するRapidusは「2nm」の半導体を生産するのに対し、PSMCの新工場では「28nm以上」の生産に臨むとしています。
この「28nm以上」の半導体は主に、車載向け半導体需要の90%以上を占めるものですが、PSMCはこの「28nm以上」の半導体を高品位で安価・大量に生産するビジネスモデルを有しています。
JASMも28nmの生産技術を有しますが、ソニーセミコンダクタソリューションズのイメージセンサー用と、デンソーの車載用半導体をメインとし、主に28nm以下の生産を行うようです。
また、Rapidusは、米国大手IT企業向けにAIや量子コンピュータ用として2nmプロセスという世界最高性能の半導体を提供しようとしています。
続いて投資額をみると、Rapidusが5兆円と最も大きく、次いでJASMの1.2兆円、PSMC新工場は8,000億円となっています。
半導体産業は膨大な資金が必要な業界であり、国からのバックアップもありますが、JSMC(PSMC)にはSBIホールディングスが出資していることもあり、より安定的な資金調達が望めることが大きな特徴です。
PSMC誘致成功の理由
PSMCが日本国内に工場を建設するにあたり、候補地として挙がったのは31か所。その中から宮城県が選ばれた理由は、東北各地に半導体関連のサプライチェーンが多数存在していること、インフラの充実度、さらに半導体分野に強い東北大学の存在が大きかったそうです。
また、村井嘉浩宮城県知事が今年7月、PSMCが日本国内に半導体工場を設立するというニュースを受けて自らSBIホールディングスに接触。同社を通じてPCMCの黄崇仁会長にトップセールスを展開したことも功を奏しました。
PSMCが宮城県に与える経済効果と雇用への期待
JASMによる熊本への投資による経済波及効果は、2022年から2031年までの10年間で約4兆2,900億円と試算されています(九州フィナンシャルグループによる)。
同じく、PSMCの工場進出による宮城県への投資による経済波及効果も非常に大きいと思われます。
また雇用の創出といった効果もあり、PSMCは現時点で1,200人雇用すると明らかにしています。宮城県の経済活性化に好影響をもたらすことが予想されます。
まとめ
PSMCの工場建設のニュース発表からまだ日が浅く、情報は少ないですが、既に計画が進んでいるJASM、Rapidusの動向を見ていると、PSMCの今後の展開がある程度予想できます。
宮城県、東北には既に半導体関連の企業が多数存在していますが、PSMCの新工場建設により、それらの企業がより活性化していくことになりそうです。
今後も引き続き、PSMC(JSMC)や半導体関連の情報を追い続けていき、レポートしていきたいと思います。
<情報参照元(最終閲覧日2023年11月13日)>
・SBIホールディングス/2023年10月31日「日本国内での半導体ファウンドリ建設予定地決定のお知らせ」
・SBIホールディングス/2023年7月5日「台湾半導体ファウンドリ大手PSMCとの日本国内での半導体工場設立に向けた準備会社の設立に関する基本合意のお知らせ」
・日本経済新聞/2023年10月31日「台湾の力晶が半導体工場、宮城・大衡村に選ばれた東北」
・経済産業省 HP「特定半導体基金事業について」
・JASM社HP「JASMについて」
・Rapidus社HP「企業理念と経営方針」
・経済産業省HP「半導体・デジタル産業戦略」
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